雪に眠る
雪に眠る
雪の平野をあるいていたらあなたが言った
あそこにはわたしの死体がうまっているのです と
「どうして? あなたはここにいるじゃない」
ああ愛しいお方 お気づきではないですか
あそこに眠るわたしのとなりにはあなたもいる
白い雪の衣を着てふたりは横たわっているのです
ここは秋には戦さ場だった
春になって雪が融けたらきれいな白い骨が出るでしょう
あなたのうつくしい緑の瞳もされこうべのうつろな穴
地に伏すわたしの髪も枯葉と泥にまじった芥となりはてて
だからここにいるわたしたちはただのまぼろし
だって雪は少しも冷たくはないでしょう?
わたしたちはもう決して、寒さを感じることはないのですよ……
そう、そうだった
積もった雪の下でわたしたちは手をつないで死んでいる
ほら ふりかえっても雪の上にわたしたちのあしあとはない
「ねえ わたしたちはどこから来たの どこへ行くの」
……それはわたしにもわかりません
けれどあなたとこうして一緒にいられるのなら、わたしはちっともかまわない
「さあ、ともにまいりましょう どこまでもこの手を離さずに」
ただ、しずかに歩いていきましょう
この深い深い雪がいつか消える遠い場所まで……