接 吻
接吻(くちづけ)
彼の人はあえかな花の香りを抱いて行き過ぎ
その無垢なる笑みに魅了され
想いの波紋は留まる処を知らず
瞳に宿した天涯の星の鼓動
祈りこめた黄金の矢は動乱の大地を遙か貫き
明日へと伸ばした腕には運命すらもしなやかに抱き寄せて
尊(たか)き御苑(みその)に咲き立つ真白の花は
己が為に摘むこと決してあたわず
ただ膝を折り頭を垂れ 無比なる忠誠と真実の言葉を捧げ得るのみ
時めぐりても唯一なる貴女(ひと)
この身と心すべてを奪いゆく麗しき王
跪き 我が手に取りしその衣端(ころもば)に
接吻(くちづけ)を―――……