ラブ・メッセージ大人風味その4 指先に灯る熱
我が君 動いては駄目ですよ
そう、じっとしていてください
全部私に任せて……
ふるえているのですか 初めてではないのでしょう?
ああ、こうして私にされるのは初めてだからと……
そうですね、もちろん私もこのような経験はありません
あなたのすべらかな手をしっかり捕らえて離さず、細心の注意を払い……
あなたは私の為すがままというこの状態にも、非常に心が躍ります
我が君、もしも私がこれをうまく成し遂げられなかったらどうなさいます?
きっと私は、下手だ不器用だとひどくお叱りをいただくことになるのでしょうね
そして罰として当分あなたには触れさせてはいただけない……などなど
いや、それではあなたの方が寂しさに耐えかねてしまうかな
……っ、頬をつねらないでください 少々痛いですよ それに刷毛先がずれてしまう
ふふっ、そんなに怒った顔をしないで
ええ、ええ、真面目に取り組んでいますとも いつもよりよほど真剣ですから
―――さあ、終わりましたよ
いかがです? 私もなかなか上手でしょう
あなたの華奢な爪はそのままで十分愛らしいけれど、こうして桜貝の色に染めるのもよいものですね
可憐な指先に口づけしたいところですが、今はやめておきましょう
せっかく塗ったマニキュアが乾くまでは、ね
いつかあなたの足の爪にも同じように塗ってさしあげましょうか
そのときは足指の1本1本を愛でながら……いや、それでは塗り終わるまで一夜もかかってしまうな
色は……足ならばもう少し深みのある色合いもいい
緋色などよいのでは 錆びた血の赤は雪白の肌によく似合うはずですから
さて、指を広げて しばしそのままで……
ああ、いけませんね 手を使っては
まだ乾いていないマニキュアが傷つく
あなたを求める私を無理に押し返したりする必要などないでしょうに
ほら、手首をつかまえてしまいますよ?
…………気づかないとお思いですか
私に手を預けているときにあなたの瞳に灯ったものに
指先が触れ合っているだけで、私とあなたの間に通じる熱を
あなたはしばらく爪のことだけ考えていてくださればいい
あとは素直に私に委ねておしまいなさい
今度は指だけでなく、その身のすべてをね…………
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